家族と法は、相性が悪いと言われる。夫婦が相互に愛し合い、両親が慈愛に満ちた聡明な育児をすることが理想だとしても、法は、たとえば愛を失った配偶者に愛することを強制できない。しかし民法は、家族間の権利義務を定める。それはどのような内容で、どのような機能を果たすのだろうか。この講義では、それを考えてみたい。150年前に明治維新を迎えた日本は、欧米諸外国との不平等条約を改めるために立法作業をすすめ、120年前に明治民法を立法した。「家」制度を定めていた明治民法が、個人の尊厳と両性の本質的平等を要求した日本国憲法に従って、70年前に大改正されて「家」制度が廃止され、現在の民法になったことは、常識として知られている。しかし現在の日本民法が定める家族法であっても、モデルにしたヨーロッパの民法とは相当に異なっていることは、それほど知られていない。日本家族法の特殊性とその抱える問題性を、比較法的な観点からも検討する。
講座内容東日本大震災の経験と教訓を踏まえ,また多発する国内外での自然災害の発生を受けて,自然災害対策・災害対応策や市民・社会の自然災害への処し方そのものを見直す必要がある。社会での変貌の中,災害や影響自体も変化しており,様々な災害の被害軽減に向けて社会の具体的な問題解決を指向する実践的防災学の礎を築くことが重要である。 その基礎となる災害科学は,事前対策,災害の発生,被害の波及,緊急対応,復旧・復興,将来への備えを一連の災害サイクルととらえ,それぞれのプロセスにおける事象を解明し,その教訓を一般化・統合化することである。 本講座では,東日本大震災における調査研究,復興事業への取り組みから得られる知見や,世界をフィールドとした災害科学研究の成果を社会に組み込み,複雑化する災害サイクルに対して人間・社会が賢く対応し,苦難を乗り越え,教訓を活かしていく社会システムを構築するための試行を紹介する。 講座は4つの構成で形成されており,各専門の教員が最新の知見や様々な知識・情報を提供する。第1週では,事前の取り組みの紹介も入れた被害実態と今後の教訓を概説し,第2週では,人間・社会科学的な側面を入れた被災地での復旧と復興を紹介する。第3週で,自然科学と防災への役割に視点を置きながら地震・津波のメカニズムと過去の履歴さらに将来予測についての研究事例を紹介する。最後に,仙台市で開催した2015年国連防災世界会議での議論と仙台防災枠組の取り組み,防災啓発・防災教育の現状,記録・伝承にいどむ取り組み,被災地での避難訓練事例などを紹介して実践的防災学の事例と将来を議論する。 なお,本講座は,「東北大学サイエンスシリーズ」の第2弾です。講座内容は,2018年1月に開講した第1回と同じ内容となり,課題内容の一部を変更しております。
講座内容大きな世界のありようの中で自分を位置づける思考のことを「世界観」と言いますが,2011年3月の「東日本大震災」はそうした「世界観」が一変するような「出来事」だったように思います。 こうした「世界観」が揺らいでいる現在を乗り越えてゆくために必要なものは何でしょうか。 もう一度,われわれを取り巻く「ものごと」の成り立ちや構造を,偏見を持つことなく,原点に立ち返って考えてみることが不可欠だと思います。 『男と女の文化史』という今回の講座は,人間社会を構成する「男」と「女」への検討を通して,人間とは何か,社会とは何か,歴史とは何か,「世界観」を再構築する際の確かな「材料」の提供を意図したものです。 全四週の講義は,それぞれにスリリングで知的な視点・技術で探究し,従来にない「男と女のドラマ」の再現を目指しました。皆さんの「世界観」構築の際の参考になれば幸いです。 ※本講座は,2018年5月に開講した第1回と同じ内容となり,課題の一部を変更しております。
寒い地域の夜空を彩るオーロラについて、光る仕組み、出現の特性、突然爆発する様子、そして、オーロラのエネルギーの流れなどについて講義します。講師は、人工衛星による宇宙観測を推進している宇宙科学研究所にて、オーロラ観測衛星プロジェクトに携わり、オーロラ研究の最前線を経験したのち、安全な宇宙開発のために、JAXAにて、太陽環境変動の研究を進めました。そして、現在、東北大学惑星プラズマ・大気研究センターにて、望遠鏡群を用いて、太陽惑星環境を研究しています。今回の舞台は、地球周辺の宇宙空間ですが、木星や土星にも、オーロラ現象は見られます。これらの惑星のオーロラの原因は太陽であることが、人工衛星や惑星探査機の活躍によって、明らかになってきました。太陽表面の絶え間のない変動、特に黒点の変動と、その影響を強く受ける惑星周辺の宇宙空間について、最新の人工衛星と地上望遠鏡の成果を基に、解説します。そして最後に、地球のオーロラの光が、生命活動によって作られた酸素の光であることを確認し、これから始まる地球外生命探査の可能性で締めくくります。なお、本講座は「東北大学サイエンスシリーズ」の第1弾です。講義内容は、2017年2月に開講した第1回と同じ内容となり、課題内容の一部を変更しております。
memento moriというラテン語は「死を想え」という意味で、現在は幸せに生きている自分自身もいずれは死を迎えることを忘れるな!という警句です。特に中世末期のヨーロッパ、ペストが蔓延するなどして逃れようのない終末観の中で享楽的な生活におぼれるキリスト教徒に対して発せられたこの言葉は、現世での楽しみや贅沢が虚しいものであることを強調するものであり、来世に思いを馳せるきっかけとなりました。”Man is mortal.(人は死すべき存在である)” と言われるように、われわれ人間はいつか必ず死を迎えます。しかし死んだらどうなるのかと言った、古い時代からの永遠の疑問は、未だ解き明かされないままです。死後世界へと旅立った人々の誰一人として、この世に戻ってきた人がいないからなのでしょう。そのため正解のわからない死をめぐって、人はさまざまな生活様式(=文化)を創造してきました。授業では現代日本人の死の文化を中心に、「死」について考えます。なお、本講座は、「東北大学で学ぶ高度教養シリーズ」の第1弾となります。講義内容は、2017年2月に開講した第1回と同じ内容となり、課題内容の一部を変更しております。
「銀河考古学」とは,銀河をその骨格である恒星に分離し,個々の恒星の性質に基づいて銀河の形成進化を追跡する天文学の一分野です。「考古学」と名づけられている理由は,古い年齢の恒星の性質,すなわちその化学組成や空間運動の特徴といった情報が,銀河の過去を知るための「化石」情報になっていて,銀河がどのような物理状態で形成されどのような進化を経てきたのかの履歴を保持しているからです。つまり,これらの情報はDNAのようなもので,銀河の過去を追跡するルーツとなるものです。この講座では,銀河考古学の基礎をわかりやすく解説します。 第1週は,人類の銀河宇宙に関する世界観が如何に発展してきたかを学びます。その上で,銀河系の全体の動力学構造とそれを囲む銀河宇宙の世界を概観します。 第2週は,銀河を構成する星の一般的な特徴とその進化と死について学びます。また,星は新しい物質の工場であり,その物質循環と銀河の進化との関係を理解します。 第3週は,銀河系の古い恒星系の分析から導かれる,銀河系の形成と進化に関する現在の描像を学びます。さらに,アンドロメダ銀河や一般銀河の観測情報に基づいて,銀河形成の一般的な考え方を理解します。 第4週は,このような銀河の動力学構造を支配するダークマターについて,その存在証拠や銀河形成に対する役割について学びます。そして,ダークマターの正体に関する現在の標準理論の問題と今後の展望について学びます。