講座内容
大きな世界のありようの中で自分を位置づける思考のことを「世界観」と言いますが,2011年3月の「東日本大震災」はそうした「世界観」が一変するような「出来事」だったように思います。 こうした「世界観」が揺らいでいる現在を乗り越えてゆくために必要なものは何でしょうか。 もう一度,われわれを取り巻く「ものごと」の成り立ちや構造を,偏見を持つことなく,原点に立ち返って考えてみることが不可欠だと思います。 『男と女の文化史』という今回の講座は,人間社会を構成する「男」と「女」への検討を通して,人間とは何か,社会とは何か,歴史とは何か,「世界観」を再構築する際の確かな「材料」の提供を意図したものです。 全四週の講義は,それぞれにスリリングで知的な視点・技術で探究し,従来にない「男と女のドラマ」の再現を目指しました。皆さんの「世界観」構築の際の参考になれば幸いです。 ※本講座は,2018年5月に開講した第1回と同じ内容となり,課題の一部を変更しております。
第1週:『源氏物語』の世界 ―その男と女の文化史―
『源氏物語』はいつ,どのようにして書かれたのか,また,『源氏物語』はどのようにして読まれてきたのか,を明らかにします。『源氏物語』の男と女について,読者がどのような関心をもっていたのかを解明します。
第2週:表現される遊女から表現する遊女へ
江戸時代の「遊女」という,逆境に生き,受け身な人生を送ったと思われがちな女性が,「狂歌」という「文芸」を「日常」生活の中に取り入れ,自己を「表現する」能動的な女性であったことに焦点を当てます。
第3週:男を滅ぼす女 ―ドイツ文学の女性像―
テーマは,「男を滅ぼす女」です。ヨーロッパにおいては,「悪女」がよく描かれ,ドイツ文学においても,様々な「男を滅ぼす女」が描かれました。「ローレライ」と「クリエムヒルト」という二人の女性を取り上げ,なぜ文学で「男を滅ぼす女」が描かれるのか,考えます。
第4週:古代ギリシア美術に見る男と女
「民主主義の源流」として名高い古代ギリシアですが,「男・女」は平等ではなく,「女たち」はほとんどの時間を自宅のプライベートな空間で過ごし,男性とは異なった人生を送っていました。古代ギリシアの「男と女の実相」を,当時の美術とともに見てゆきます。